高校生(そして在学生諸君)へ
センター試験が終わって、いよいよ二次試験を迎えることになりますね。出願のヒントになればと思って、群馬大学工学部環境プロセス工学科の尾崎純一研究室の紹介をさせてもらいます。
◆ 尾崎研究室とは
カーボン材料の極限を追求する研究室です。このページを見てもらうと分かりますが、57年もの長い間、カーボン材料一筋に打ち込んできた研究室です。といっても、僕が半世紀以上やってきた訳ではありませんが。ちなみにカーボン材料とは、炭のことです。もちろん、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェンといったハイテク材料も炭の仲間だと言うことは知っていますね。
◆ 尾崎研究室で研究していること
今、僕の研究室で力を入れていることは、水素エネルギー社会を目指し、その基盤を担う材料をカーボンで実現することです。少し具体的に言いますと、「水素をつくる」、「水素をためる」そして「水素を使う」ためのカーボン材料を作ることです。この研究を提案して、本年度群馬大学は「アドバンストカーボン構造・機能相関解析研究拠点」として文部科学省より認められ、大型装置が導入されました。この拠点整備計画では、全国で18大学・研究所が選ばれたのです。
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◆ なぜカーボン材料で水素エネルギー社会を考えるの?
僕が子供の頃から、「石油はあと30年しか持たない」とか言われてきました。排気ガスによる公害や、排出CO2による地球温暖化も懸念されているしね。こんなことを考えると、人間が生きていること(地球にはびこっていること)自体悪いことで、僕らには未来はない、もしくは僕らには未来を考えてはいけないような気がしてきます。
でも、僕らは生まれてきたのだし、今も宇宙・地球・環境に生かされているのです。ですから、何も否定的に考える必要はないと思っています。僕らが、種の保存と存続を考えて生きること、これは善です。
人間の文化的な活動のためには、精神の充足・充実が必要ですが、それを支えるための生活の質の維持は、それ以上に必要です。ですから、僕らは生活の質を落とすことはできませんし、落としてはいけません。もちろん、浪費は悪であり、節約ということは重要な考え方です。
環境にかける負荷を極力低減し、僕らの生活の質を維持していくこと、これが僕たちの課題です。そのためには、生活を支えているエネルギーを、クリーンな水素に変え、これを使った社会の構築が望ましいと考えます。しかし、水素は水素分子という「使いやすい形」では天然には産出しません。また、軽い気体ですので、非常に逃げやすいという性質もあります。このような水素から、効率的にエネルギーを取り出すには燃料電池を使うのが一番であることも知られています。
現在の水素を使う技術は、石油資源や希少金属資源に依存しているところが大きいのです。これが、この技術の工学的な問題です。国もこれを懸念して、「元素戦略」という言葉を使い、注意を喚起しています。このような問題と社会的状況の中、水素を使う技術を、僕たちの身の回りにあるカーボン材料を使って実現できれば、低コストで多くの人に水素エネルギー社会を享受してもらうことができます。
世の中で低炭素社会といっていますが、これはこのページを見る人は分かっているように、これは二酸化『炭素』を減らすことです。これを逆手にとって、僕らは『カーボン(炭素)材料を使って低炭素社会(=水素エネルギー社会)を作る』と世の中に宣言しています。
◆ 尾崎研究室では何を学ぶの?
僕の研究室に入ってきた学生達には、次に示すような人材になって欲しいと思っています。一つは、カーボン材料を主題とする研究、もう一つは、問題の設定とその解決方法を身につけた研究者・技術者です。
第一のタイプを育てることは、カーボン材料研究のDNAを引き継ぐ人材を、そして、二つのタイプを育てることは、カーボンという材料、そしてそれに関わる問題を通して、問題の本質を見極め、それをどのように解決していくか、という「ものの考え方」を身につけた人材を、僕の研究室から輩出していくことを意味しています。当然、一つめの人物にも問題設定とその解決に関するスキルの修得は求められます。ついでに言うと、僕の研究室には、一台数百万から数千万円もするような装置が転がっています。このような装置を自在に操り、自信をつけて社会に出てもらうことも目標のひとつです(そのうちホームページでも紹介する予定です)。
◆ 尾崎研究室に来るには
まずは、
『群馬大学工学部』を受験して、合格して下さい。そのときに、
『環境プロセス工学科』を選びましょう。次に、入学したら、一所懸命勉強をして下さい。なぜなら、3年生の10月に研究室選びがあり、ここでは成績の良い人が有利に選択できるように今のところはなっているからです。もう一度繰り返します。「勉強して下さい」
◆ どういう人に来て欲しいかというと・・・
ホームページの新着情報の後ろの方に「尾崎研究室のモットー」を載せました。要するに、僕の研究室では、好奇心にあふれ、前向きな考えで自主的かつ論理的にものごとを進めることができる人材を育てたいと考え、努力をしています。研究室の前任者である大谷朝男先生(群馬大学名誉教授)が、「おいしい水のある川岸まで連れてきても、喉が渇いていないんじゃ仕方がない」と仰っていました。まさにその通りです。ですから、「知ること」に対する飽くなき意欲を持った人材、これは必須です。
でも、人間は変わります。僕の研究室に来れば、変わりたいと思っている人は変わることができます。良い方向に変わっていった卒業生が何人もいます。そのためには、大学時代に学問に「バカ」になってみることが必要です。人生100年(僕はこのくらい生きるつもりです)のうちで、たかだか4年間(大学卒)もしくは6年間(大学院卒)の時間を「バカ」になって過ごすことで、その25倍の残りの人生が大きく変わります。ですから、今の自分ではまずいと思っていて、何かやりたいと思う人は僕の研究室の門を敲いて下さい、強い「願い」と「祈り」を持って。
好奇心にあふれた人を、僕は待っています!
カーボン素材研究には多岐にわたる化学の知識が必要!
燃料電池は負極で水素酸化反応(H2 → H+ + e-)、正極で酸素還元反応(1/2O2 + 2H+ + 2e- → H2O)を行ない、電気エネルギーを得る装置です。現在、自動車用および定置用として注目を浴びているのが固体高分子形燃料電池(PEFC)です。これは小型化、低温動作が可能であるという特徴を持っています。
PEFCの基本的な構造は固体高分子膜を負極と正極で挟み込んだものです。各電極には水素酸化反応と酸素還元反応を行なう電極触媒が用いられています。PEFCの実用化の上で、この電極触媒の低コスト化が重要な課題となっています。
正極での酸素還元反応は水素酸化反応に比べて非常に遅いため、性能の低下を招きます。これを補うため、大量の白金が電極触媒として使われています。白金は高価で希少なため、燃料電池を搭載する燃料電池車では、白金だけで1台あたり30万円程度のコストになります。このため、1台百数十万円の大衆車には搭載することが困難です。また、埋蔵量も限られており、現在の技術レベルでは燃料電池車2.8億台分の白金しかないと言われています。
そこで、尾崎研究室ではナノシェルという炭素材料を開発しました。ナノシェルは高分子と金属を混合し、炭素化することで作ることができ、直径約10~50nmの中空球殻状の構造を有しています。また、酸素還元反応に対して高い活性を示します。そのため白金に代わる触媒として期待されており、本研究室ではこの研究を行なっています。
●尾崎研を希望した理由
学部2年のとき尾崎先生の講義を受け、この研究室に興味を持ちました。学生実験の時には尾崎研究室の先輩と仲良くなり、炭素を使った燃料電池触媒などの研究内容の話や研究室を紹介してもらいました。研究内容はもちろんですが、先生の人柄や学生同士の仲の良さなど、研究室の雰囲気に引かれて、尾崎研究室を志望しました。
●研究室生活について
研究室に入ると朝から晩まで実験ばかりしているというイメージがありますが、そんなことはありません。しっかりと計画を立てて実験をすれば、自由に使える時間は意外と多いです。そのような時間を利用し、研究室のみんなで飲みに行ったり、遊びに行ったりしています。このように研究以外も非常に楽しい、充実した時間を過ごしています。
●研究について
この研究室では炭素をベースとし、様々な分野への応用を狙った研究を行っています。研究成果は学外で行われる学会で発表します。博士後期課程に入ってからは、国際学会で発表する機会があり、先日アメリカでの国際学会に参加しました。ここでは英語で自分の研究を発表し、さらに世界で行われている研究と触れ合うことができ、貴重な経験となりました。
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●尾崎研を希望した理由
私は高校時代から燃料電池に興味がありました。そして、この研究室なら燃料電池に関する研究ができると思い志望しました。さらに先輩たちの話も聞き、この研究室なら楽しく研究室生活を送ることができると思い、決断しました。研究室生活を選ぶポイントは、自分のやりたいことができるかどうかが第一だと思います。それに加え、研究室の雰囲気が自分に合うかというのも重要だと思います。それを知るには、実際にその研究室の先輩と話をすることが大切だと思います
●研究室生活について
研究だけでなく、飲み会や研究室旅行も積極的に企画しています。また、プライベートでも一緒に遊ぶ機会が多くあります。夏休みにはキャンプに行きましたし、卒業旅行では沖縄にも行きました。このように、研究室内にとどまらず、深い人間関係を築くことができる研究室だと思います。
●研究について
私自身そうですけど、研究は予想した結果とは異なる結果が出ることがほとんどです。でも、そんなときに一人で考えずに、先生や友達と話ができる雰囲気がこの研究室にはあります。当研究室は、様々な分野の研究が行われているので、友達と話をするだけでも自分の興味を広げていくことができると思います。 |
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